世界でたった100人しか聴くことができなかった、この貴重な瞬間に立ち会った日本人がいる。地球温暖化をはじめとした環境問題に対して、長年活動をしているアーティスト、小林武史だ。「ルイ13世」が”音楽”を通して世界へ掲げるメッセージ、そして、そのプロジェクトへ賛同したファレル・ウィリアムス、双方の思いがどのような形で表現されたのか。上海から帰国した翌日、小林のレコーディングスタジオでイベントについて聞いた。
会場で聴いたファレルの曲ですが、冒頭はフォーキーな響きで、日常感はあるのに不思議とファンタジーなんです。地球という場所に僕らがいるということが、ある種ファンタジックなことなのかもしれない。そう思わせるような始まりがあって、でも途中からマイナー感のある響きになり、現実を突きつけてくるような雰囲気に変わる。まさに警鐘という意味なんだろうけど、メロディとアレンジにどこかノスタルジックな要素もあって、大仰にならない。
その点はさすがファレルだなと思いました。
ファレル・ウィリアムス作曲による特別な一曲が録音されたレコード。この盤はコニャック地方 の土を原料とする粘土で作られている。
僕自身、ap bank を2003年に設立して、地球温暖化をはじめとした環境問題に取り組んできました。『不都合な真実』のアル・ゴアさんにもお会いできましたし、「どうにかしよう」という姿勢は僕の中でずっとキープできてるんです。
実感されてる方もいると思うんですが、2017年は世界中がサステイナブルの方向にシフトした重要な年です。ヨーロッパの数カ国では、10年ぐらい経ったらガソリン車の製造をやめるという宣言を出している。逆に考えると、これは新しいビジネスが生まれる可能性が広がったということ。だからこそ、もっと声を上げていく必要があるんだということをファレルは言っていたんだと思います。
こういう話の背景にある「地球について」みたいな部分で考えると、何が正しいことなのか、どうするのが正しいのかという議論になりがちなんだけど、事情を知ってる人からすれば、もどかしいところはあります。どの世界にでもある話だろうけど、既得権益っていうものがあるわけです。エネルギーだと、石油、石炭があって、特にオイルっていうものに関して言えば、動くお金の額もすごいですし、そのパワーを感じない人はいないと思う。そんな状況に対して「やっぱり使わないようにしていこう」っていうのは、確かに大変なこと。でも問題について激論を交わしながらどうするのか考えるのではなく、今回のようにパーティの舞台を使って遊び心とともに発信していく。そういう手法は本当に大事だと思いますし、今後もっと必要になってくる気がします。
ap bank を10年以上やってきた自分も、それは今回すごく感じました。あとファレル・ウィリアムスがいいなと思ったのは、真面目に本気で取り組んでいたこと。舞台はパーティなのに、そのバランス感覚はすごく面白いと思いました。
世界的なお酒のブランドが、映画・音楽を使ってこういう企画をディレクションしたという、そのエディット感覚がとてもユニークですし、いい時代になったなと。ヨーロッパ発のブランドが、グラミー常連のアメリカのアーティストを招いて、上海でパーティを開催する。しかも100年後まで誰もその曲を聴けない。「遊び」が徹底してますよね。だって100年後には誰も生き残ってないわけだし、それだけでも注目させる要素がある企画ですよ。
上海では自転車のシェアが当たり前になってきていて、バーコードをスマホで読み取って、みんなで乗るんです。以前は雑多な自転車がすごい密度で走ってるイメージだったのに、どんどんエコ化されている。バイクも電動バイクになってるし、おそらく車に関しても、日本よりちょっと早い段階でEV化していく傾向があると思う。中国の大気汚染の問題とか、やっぱり切実だという背景もあると思いますが、そういう意味での二面性が感じられてよかったです。エコ化に象徴される上海のスマートさと、パーティで盛り上がろう!みたいな「遊び」の部分。会場の雰囲気もそんな印象でした。
仏Fichet-Bauche 社が設計した特別な金庫の中にレコードと一緒に保管される「ルイ13世」。
実際、エスタブリッシュというかハイエンドな人たちだけじゃなく、いろんな人たちが会場に集まっていて、その場だけでしか見れない風景を作り上げていたと思います。やっぱり、何かしらのメッセージを伝える場のイベントっていうのは、伝えたいことを理解してる人だけが集まるだけじゃなく、ざっくりとした興味で来てもらうことも大切だから。そういう人たちに何か信号のようなものを発信して、彼らがそれを持ち帰るということが大事。毎回同じ顔ぶれで盛り上がるのもいいけど、広がりという点で考えるとね。
自由と責任っていうのは、押しつけられるものではなく、生きてるっていうことを考える上で大事なものである。そういうことが今回はうまく伝わっていたんじゃないでしょうか。
僕は普段からブランデーが好きなんだけど、ルイ13世のバランスのとれた味というのは素晴らしいです。そんなお酒のイメージが視覚化されていて、僕はよく「相対化する」って言うんですけど、始まり方と終わり方を含めて、ちゃんと意味のあるイベントだったし、素敵な音楽だったと思います。
小林武史
音楽プロデューサー、キーボーディスト。80年代から現在まで、Mr.Children、Salyu、back number といった数多くのアーティストのプロデュースを手掛ける。2003年に「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギーや食の循環、東日本大震災の復興支援など、さまざまな活動を行っている。http://www.oorong-sha.jp/
ルイ13世 オフィシャルサイトwww.louisxiii-cognac.com
僕自身、ap bank を2003年に設立して、地球温暖化をはじめとした環境問題に取り組んできました。『不都合な真実』のアル・ゴアさんにもお会いできましたし、「どうにかしよう」という姿勢は僕の中でずっとキープできてるんです。
実感されてる方もいると思うんですが、2017年は世界中がサステイナブルの方向にシフトした重要な年です。ヨーロッパの数カ国では、10年ぐらい経ったらガソリン車の製造をやめるという宣言を出している。逆に考えると、これは新しいビジネスが生まれる可能性が広がったということ。だからこそ、もっと声を上げていく必要があるんだということをファレルは言っていたんだと思います。
こういう話の背景にある「地球について」みたいな部分で考えると、何が正しいことなのか、どうするのが正しいのかという議論になりがちなんだけど、事情を知ってる人からすれば、もどかしいところはあります。どの世界にでもある話だろうけど、既得権益っていうものがあるわけです。エネルギーだと、石油、石炭があって、特にオイルっていうものに関して言えば、動くお金の額もすごいですし、そのパワーを感じない人はいないと思う。そんな状況に対して「やっぱり使わないようにしていこう」っていうのは、確かに大変なこと。でも問題について激論を交わしながらどうするのか考えるのではなく、今回のようにパーティの舞台を使って遊び心とともに発信していく。そういう手法は本当に大事だと思いますし、今後もっと必要になってくる気がします。
ap bank を10年以上やってきた自分も、それは今回すごく感じました。あとファレル・ウィリアムスがいいなと思ったのは、真面目に本気で取り組んでいたこと。舞台はパーティなのに、そのバランス感覚はすごく面白いと思いました。
世界的なお酒のブランドが、映画・音楽を使ってこういう企画をディレクションしたという、そのエディット感覚がとてもユニークですし、いい時代になったなと。ヨーロッパ発のブランドが、グラミー常連のアメリカのアーティストを招いて、上海でパーティを開催する。しかも100年後まで誰もその曲を聴けない。「遊び」が徹底してますよね。だって100年後には誰も生き残ってないわけだし、それだけでも注目させる要素がある企画ですよ。
上海では自転車のシェアが当たり前になってきていて、バーコードをスマホで読み取って、みんなで乗るんです。以前は雑多な自転車がすごい密度で走ってるイメージだったのに、どんどんエコ化されている。バイクも電動バイクになってるし、おそらく車に関しても、日本よりちょっと早い段階でEV化していく傾向があると思う。中国の大気汚染の問題とか、やっぱり切実だという背景もあると思いますが、そういう意味での二面性が感じられてよかったです。エコ化に象徴される上海のスマートさと、パーティで盛り上がろう!みたいな「遊び」の部分。会場の雰囲気もそんな印象でした。
仏Fichet-Bauche 社が設計した特別な金庫の中にレコードと一緒に保管される「ルイ13世」。
実際、エスタブリッシュというかハイエンドな人たちだけじゃなく、いろんな人たちが会場に集まっていて、その場だけでしか見れない風景を作り上げていたと思います。やっぱり、何かしらのメッセージを伝える場のイベントっていうのは、伝えたいことを理解してる人だけが集まるだけじゃなく、ざっくりとした興味で来てもらうことも大切だから。そういう人たちに何か信号のようなものを発信して、彼らがそれを持ち帰るということが大事。毎回同じ顔ぶれで盛り上がるのもいいけど、広がりという点で考えるとね。
自由と責任っていうのは、押しつけられるものではなく、生きてるっていうことを考える上で大事なものである。そういうことが今回はうまく伝わっていたんじゃないでしょうか。
僕は普段からブランデーが好きなんだけど、ルイ13世のバランスのとれた味というのは素晴らしいです。そんなお酒のイメージが視覚化されていて、僕はよく「相対化する」って言うんですけど、始まり方と終わり方を含めて、ちゃんと意味のあるイベントだったし、素敵な音楽だったと思います。
小林武史
音楽プロデューサー、キーボーディスト。80年代から現在まで、Mr.Children、Salyu、back number といった数多くのアーティストのプロデュースを手掛ける。2003年に「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギーや食の循環、東日本大震災の復興支援など、さまざまな活動を行っている。http://www.oorong-sha.jp/
ルイ13世 オフィシャルサイトwww.louisxiii-cognac.com
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